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5回連続幸福度日本一

福井県の魅力に迫る!

文・写真=友廣みどり

5回連続、幸福度日本一※に輝いている福井県。
またここ数年で、移住者も増えています。
福井県の魅力はどんなところにあるのでしょうか。
移住という観点から探ってみました。
※一般財団法人日本総合研究所「全47都道府県幸福度ランキング」

自然豊かな土と触れ合える
環境の中でのびのびと暮らせる
福井県池田町。福井市内から車で約50分の山間部に位置し、有数の豪雪地帯でもある人口約2000人の町だ。この町に住む長尾伸二さんと真樹さんは、「20年間農林業に従事すれば新築一軒家をプレゼント」という町の移住施策が掲載された新聞広告をきっかけに約30年前、大阪から移り住んだ。

移住の理由を「子どもたちを土と触れ合える環境でのびのびと育てたくて」と話す真樹さん。すかさず伸二さんが「のびのび育ちすぎたけど」と笑う。息子さんがアトピー性皮膚炎だったことも移住の理由のひとつだ。

移住当初は「3カ月ぐらいで帰ってくるんじゃない?」と両親や親戚に言われたが、子どもたちは地元の子たちとすぐに打ちとけ、田んぼを裸足で駆け回った。そして現在、長尾さん一家を含む池田町の移住施策の第1期生10家族のうち7家族が住み続けている。池田町の魅力は、やはりその自然の豊かさと手入れされた景観だという。「池田の景色を眺めながら仕事をしていると、とても気持ちがいいんです」

移住して数年間は先輩農家のもとで働き、長尾農園として独立。池田町は化学肥料や農薬の使用を極力抑えた米づくりを掲げているが、町で無農薬・有機農業に最初に取り組んだのは長尾さん夫妻だ。当初は周囲の反対を受けたが、そのうち町としても有機農業に取り組むように。現在15haで減農薬米を作り「一俵懸命」というオリジナルブランドを展開、町内をはじめ、ネットや独自ルートで販売している。農業だけでなく町内のいろいろな活動にも参加し、町長とも気軽に言葉を交わす、町にはなくてはならない存在だ。

いろんな人が繋がれる
ほどよい規模のコミュニティがいい
これまでも池田町の移住者代表として、数々の取材を受けてきた長尾さん。「転機になったのは、取材に来てくれたライターさんと知り合ったのをきっかけに、街(福井市)へ行くようになったこと。それまでは池田町の中にいることが多かったので」

積極的にセミナーや勉強会に顔を出すようになると、デザイナーや飲食店オーナー、酒蔵関係者といったさまざまな職業や年代の人たちと繋がるようになり、刺激を受けたという。「社会の価値観が変わり、SNSが普及し情報社会になりつつあることを感じました。人との交流の時代が来て、その人に会いに行く旅が始まると思いました。それで池田に来てくれた人がゆっくりできる場所を作りたいと思い、2018年にカフェ『長尾と珈琲』をオープンさせたんです」

当時知り合ったライターさんとは家族ぐるみの付き合いが続いている。「カフェの看板のデザインも、デザイナーさんに紹介してもらった人だったり。いろんな人と横に繋がれるほどよいコミュニティが福井のいいところ。だから、移住してきた人にも街に出るといいよと言っています」

元々カフェの店長をしていた伸二さん。「長尾と珈琲」では10種類以上のコーヒー豆を自家焙煎した珈琲が味わえ、いろんな人が行き交う。地元の農業・移住仲間や、県内の長尾ファン、SNSを通じて県外からも長尾夫妻に会いに客が来店。心地よい池田町のコミュニティとなっている。

知人・友人を介せば、会いたいと思う人に会えたりする。そんなコミュニティのほどよい規模が福井の魅力でもある。「ここには70歳を超えても元気に農業を続けている人がいる。その姿を見るとまだ頑張れると思いますね。これからも農業とカフェが続けられたら幸せ」と、長尾さん夫妻は歳を重ねた今も池田暮らしを楽しむ。

(ノジュール2024年3月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)

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