老後に備えるあんしんマネー学 第47回

さまざまな情報が飛び交うなか、老後資金に不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。
お金を上手に管理して、老後を安心かつ心豊かに暮らすための、備えのマネー術を紹介します。

50代以降の資産運用は
余裕資金を知ってから始めよう

文=畠中雅子 イラスト=平田利之

今年から新NISA 制度がスタートしたこともあり、株式などの相場環境が好調だと、「運用しなければ、世の中の波に取り残されてしまうのではないか」と感じる方は増えているようです。個人的にも、運用はしたほうがよいと捉えていますが、50代以降の資産運用は、リスクを取りやすい若い世代とは異なる考え方が必要です。特に、これから運用を始めようとする運用初心者は、リスクの取り方には配慮しなければなりません。

50代は分散投資。
積極投資は年金生活に入るまで
今回はリスクの話から入ってしまいましたが、現役で働いている方は株式、投資信託、債券など、さまざまな商品に投資されてはいかがでしょうか。為替リスクはありますが、海外で運用する商品も選択肢に含めて、分散投資にチャレンジするのもおすすめです。リスク許容度が高めの現役時代は、失敗を恐れずに運用商品を購入するのもよいでしょう。ただし、積極的に運用するのは、年金生活に入る前までと考えるのが安全です。

年間の赤字額の総額と老後資金額を比べてみるすでに年金暮らしをされている方は、運用商品を選ぶ前に、年間の赤字額を計算することをおすすめします。年間の赤字額は、月々の赤字の1年分に加え、固定資産税や家電の買い替え費用のような、特別支出の1年分も加算します。

家計簿をつけていても、年間の赤字額を計算するのは大変な作業です。そこで、1年前の同じ時期の預金通帳と照らし合わせて、1年間の残高の差額を計算することで、年間の赤字を大まかに把握すればOKです。

1年間の赤字額が分かったら、次は90歳、あるいは95歳から現在の年齢を引いて、「残された人生の年数の目安」を計算してみてください。算出された金額が、保有している老後資金額より少ない場合、差額は余裕資金と考えられます。余裕資金を預貯金のままにするより、一部を運用に回すとよいでしょう。

一方、算出された金額が老後資金額より多ければ、リスク許容度が低いことが分かります。この場合、積極的な運用はあきらめて、国債や地方債、債券タイプの投資信託などの大きな利益は望めないけれど、損失を抑えられる商品で運用するのがおすすめです。

株主優待で年金生活を少し豊かにする老後資金に余裕はないけれど、少しでも運用に関わりたい場合、株主優待を目当てに株式を購入するという考え方もあります。株主優待制度を導入している企業からは、自社製品のほか、肉や魚、調味料などの食料品、金券、食事券などが定期的にもらえるからです。

年金生活で株主優待がもらえると、現役時代よりも間違いなく家計が助かります。そんな優待品には、お米を選択できるケースも多くなっています。ちなみに我が家では、子どもが独立して優待の食事券を使わなくなったら、お米に交換しようと考えています。

はたなか まさこ
ファイナンシャルプランナー。
新聞・雑誌・ウェブなどに多数の連載を持つほか、セミナー講師、講演を行う。
「高齢期のお金を考える会」「働けない子どものお金を考える会」などを主宰。
最新刊『70歳からの人生を豊かにするお金の新常識』(高橋書店)など著書多数。

(ノジュール2024年8月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)

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