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8万人の酒好きが集う

鹿島の“酒蔵ツーリズム”

文:中上晋一 写真:山本弥生

佐賀県鹿島市の6つの酒蔵が地域活性のために始めた年に一度の「鹿島酒蔵ツーリズム」。
お気に入りの一本を求めて、今年は日本酒好きが集まる春の一大イベントへ。

江戸時代から醸造業が
盛んだった肥前浜宿
佐賀県西南部、有明海沿いに位置する鹿島(かしま)市。有明海の干潟や、日本三大稲荷に数えられる祐徳(ゆうとく)稲荷神社の門前町として有名だが、昨今は「鍋島」などの名酒を生む酒どころとして、注目を集めている。

中心となる肥前浜宿(ひぜんはましゅく)は、有明海に注ぐ浜川河口の港町。江戸時代には長崎街道の脇往還・多良(たら)海道の宿場町としても栄え、当時から酒や醤油などの醸造業が盛んだった。最盛期には十数軒の酒蔵が軒を連ねていたというが、現在は光武(みつたけ)酒造場、峰松(みねまつ)酒造場(肥前屋)、富久千代(ふくちよ)酒造の3軒のみ(ほかに市内には3軒)。普段は峰松酒造場以外は酒蔵見学を行っていないが、毎年3月のイベント「鹿島酒蔵ツーリズム」では市内6軒すべてが一度に蔵開きするとあって、県内外から8万人を超える日本酒ファンが押し寄せる。

肥前浜宿観光の拠点は特急が停車するJR肥前鹿島駅の隣、肥前浜駅。2018年に新しくリニューアルした白と淡いピンク色の外観で、昭和初期の駅に近づけて改装された。

駅から歩いて5分、通称「酒蔵通り」と呼ばれる浜地区は、江戸時代に宿場町として醸造業を中心に発展。茅葺、桟瓦(さんがわら)葺の町家、土蔵造の酒蔵、洋風建築など、江戸から昭和に至る様々な時代の建築が風情ある町並みを形成している(重要伝統的建造物群保存地区)。600mにわたって続く酒蔵通りの入口には、旅人の荷物や物資の輸送を中継していた「継場(つぎば)」が往時の姿をとどめ、現在は観光案内所になっている。

鹿島の酒が揃う
観光酒蔵・肥前屋へ
鹿島市内の6つの酒蔵のうち、通年開放されているのが“観光酒蔵・肥前屋”と呼ばれている峰松酒造場だ。「肥前浜宿」や「王将」などの銘酒を醸している蔵元で、四代目の峰松一清さんによれば、「ふるさとをもっとみんなに知ってもらいたい」と酒蔵を開放し、訪れた人に酒造りや肥前浜宿観光について気さくに案内している。

本館入口の奥へと足を踏み入れると、酒蔵で使われる米を蒸すための大釜や「櫂(かい)入れ」用のタンクなどが展示されていた。櫂入れとは水と麹と蒸米を棒でかき混ぜる操作のことで、酒造りの重要工程。仕込み現場には入れないが、ここで櫂入れ体験もさせてもらえる。これらを前に峰松さんは、「酒蔵にとって大敵は何だと思いますか?そう、納豆です」。名調子で酒造りについて説明してくれる。

無料試飲コーナーには日本酒をはじめ、焼酎、果実酒などがずらりと並ぶ。日本酒は吟醸・純米・生酒など惜しみなく試飲を楽しめるが、「お気に入りを見つけるのが楽しくて、お客さんもここに来るとついついたくさん買っちゃうようですよ」と峰松さん。周辺の酒蔵では試飲ができないことも多いため、飲み比べられるのはありがたい。

峰松酒造場がつくる「肥前浜宿」は、米の旨さが活きた甘口の日本酒で、女性客に人気だとか。飲みやすいのは甘さのせいだけではない。“肥前浜宿”シリーズに使用する米は、農業生産法人の「イケマコ」という佐賀の農家の米。「土作りにこだわり、昔ながらの藁やもみ殻、米ぬかの漉(すき)込みで土を作っています。酵素を使って強い土を作り、丈夫な米を育てているんです」(峰松さん)。

米どころならではのあられなど、みやげ品の品ぞろえも豊富で、ついつい長居をしてしまいそうだ。

(ノジュール2019年2月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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