お悩み解決!旅するカラダ 第31回
十分に睡眠時間は確保できているはずなのに、
なぜか日中に強い眠気を感じる人は、
睡眠時無呼吸症の疑いがあります。特に太っている人は要注意です。
睡眠時無呼吸症の概要と検査
長年にわたりこの病気を抱えていると、その生活に慣れてしまいがちです。
しかし、強烈な睡魔によって仕事に支障をきたしたり、
脳卒中や心臓病になったりする危険性が高まります。
睡眠時無呼吸症
最大の原因は肥満睡眠中に気道が詰まり、無呼吸状態になってしまうことを睡眠時無呼吸症(すいみんじむこきゅうしょう)と呼びます。気道の先天的な異常、喫煙や鼻閉(びへい)なども危険因子と考えられていますが、やはり最大の原因は肥満です。脂肪が付くことによって咽喉頭部が狭くなり、上気道の閉塞が繰り返し起こるだけでなく、舌にも脂肪が付き、就寝中にその〝太った舌〞が喉の奥に落ち込むことで気道を塞ぐという例もあります。
顎あごなどの骨格が原因でこの病気になる人もいますので、若いから、痩せているからといって安心はできません。患者さんは寝ているわけですから、呼吸が止まっているかどうかはわかりません。一緒に寝ている家族などに指摘されて受診する人がほとんどです。寝ているときに呼吸が止まり息苦しくて目が覚める、日中に突然眠くなる、疲労感を感じるなどの症状があれば、睡眠時無呼吸症を疑っていいでしょう。中でも恐いのは、日中における強烈な睡魔で、車の運転中に意識を失うかのように寝入ってしまい、大きな事故が起こることもあります。
代表的な検査として、睡眠中の呼吸状態をモニタリングする方法があり、厳密に検査するときは脳波を調べることもあります。よって、これらの検査は病院に1泊して受けなければなりません。睡眠中に1時間で5回以上、呼吸が止まっていれば、睡眠時無呼吸症と診断されます。
長年にわたってこの病気を抱えていても、自覚していない人も多く、たとえ自覚していたとしても、仕事や生活に支障をきたしていないということを言い訳にして、放置したままの人も少なくありません。ところが、就寝中に一時的とはいえ呼吸が止まるわけですから、酸素不足に陥っており、循環器系に問題が起こることもあります。特に心血管に悪影響を及ぼすので、狭心症(きょうしんしょう)や心筋梗塞、不整脈などへの注意が必要です。
また、血糖値の上昇を抑える働きが不眠によって低下するという報告もあります。
肥満は糖尿病や心臓病、さらに、睡眠時無呼吸症を引き起こし、その睡眠時無呼吸症が糖尿病や心臓病の原因になるという悪循環を起こすのです。
睡眠時無呼吸症の治療法
気道を塞いでいる余分な肉を押しのけて空気を送り込むか、
その肉を減らすか取り除くか、
それが睡眠時無呼吸症治療の目標です。
治療は耳鼻咽喉科、
呼吸器内科、歯科で太っていてこの病気になっている人は、何より肥満の解消が第一です。喉に付いた余分な肉をある程度それで落とすことができます。つまり、気道を塞いでいる要因を取り除くのです。
しかし、誰もがそう簡単にダイエットできるわけではありません。そのような場合、一般的に用いられているのがCPAP(シーパップ)療法です。コンプレッサーを使って、鼻に装着したマスクへ空気を送り、スムーズに呼吸できるようにします。コンプレッサーはポータブルでそれほど大きくありません。寝床の横に置くことができますが、就寝中、ずっとマスクを装着していなければならず、これではぐっすり眠れないという人もいます。検査によって睡眠時無呼吸症と診断されれば、健康保険が適用され、月額5000〜6000円ほどでレンタルが可能です。
これでも症状が改善されなかったり、重度の睡眠時無呼吸症であった場合は、扁桃(へんとう)や口蓋垂(こうがいすい)(のどちんこ)などの手術を行なうこともあります。ただし、手術を必要とするような例はほとんどありません。
ここまでは、耳鼻咽喉科および呼吸器内科での治療です。軽度の場合、歯科においてマウスピースを用いる治療法があります。オーダーメイドのマウスピースを作製し、それをつけて就寝することで、顎や舌を前へ出して気道を確保するのです。マウスピースは中等症までのいびきや睡眠時無呼吸症に適応されます。歯型をとってから10日ほどで完成し、CPAP療法ほど費用はかからず、効果の現れる人も多いという報告があります。
なお、仰向けよりは横向き、それよりもうつ伏せに寝るほうが、気道は塞がりにくいということも覚えておきましょう。
(ノジュール2016年5月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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