人気の特集
本をひらけば たのしい世界
魔法の文学館〈東京〉
子どものころのワクワクを
思い起こさせてくれる文学館13歳の魔女・キキは満月の夜、ひとり立ちの旅に出る。キキが使える魔法はほうきで空を飛ぶことだけ。たどり着いたコリコの町で、人々の思いを乗せた荷物を届けながら、喜びや悲しみ、悩みを経験し、成長していく。『魔女の宅急便』が刊行されたのは昭和60年(1985)、作者の角野栄子さんが50歳のときのことで、昨年、刊行から40周年を迎えた。当時、主人公のキキと同じ歳だった子どもたちは時を重ね、今、ノジュール世代に。子どものころ、ワクワクしながらページをめくった気持ちを思い起こしながら、作者の世界観が詰まった魔法の文学館を訪ねたい。
館内に一歩入ると、そこは圧倒的な〝いちご色〞の世界。約1万6000冊の本が収蔵されている。
本の中にはたくさんの冒険と不思議が詰まっていて、「本をひらけば たのしい世界」と語る角野さん。昭和10年(1935)生まれの角野さんが作家としてデビューしたのは35歳のとき。5歳のときに母を失うという悲しい体験から、ここではない遠くの世界へと想像をふくらませて遊び、その楽しさが物語を書くことに深くつながっていったという。「ここではないどこかへ行きたい」と強く願っていた角野さんは、結婚後、24歳でブラジル・サンパウロに渡り、2年間滞在。そのときの体験をもとに書いた作品『ルイジンニョ少年』がデビュー作となった。『魔女の宅急便』が生まれたのは、その15年後。長女・りおさんが12歳のときに描いた絵がきっかけだという。月夜を飛ぶ魔女のほうきの柄にはラジオがぶら下がり、黒猫が乗っている。その絵を見た瞬間、角野さんの頭の中に物語が流れ込んできたそうだ。
館内の大階段で2階に上がれば、自宅の仕事場をイメージした「栄子さんのアトリエ」があり、創作の現場を見せてもらったような気持ちになる。そして、角野さんといえば、カラフルな装いで有名なファッショニスタだ。そのライフスタイルもノジュール世代にとって憧れであり、一つの指針になる。
〝いちご色〟の館で
ファンタジーの世界に没入魔法の文学館は2023年11月に開館。江戸川区で最も海抜が高い緑の丘の上に、浮かぶように立つ真っ白な建物は、角野さんの物語のファンだという隈研吾さんの設計。「フラワールーフ」と名付けられた花びらが広がるようなデザインの屋根が特徴だ。そして館内は一転して〝いちご色〞の世界。
1階は『魔女の宅急便』の主人公・キキが初めて舞い降りたコリコの町をイメージしたエリア。中央の広場では、猫耳の付いたモニターから角野さんが本や物語の楽しさ、すばらしさを語りかけ、角野さんの物語の中に登場するキャラクターたちが映し出される。ひときわ目を引くのは小さな〝おうち〞が集まったような三角屋根の本棚の数々。角野さんの著書のほか、さまざまな児童書、翻訳本、魔女に関する研究本などが配架され、館内のどこでも好きな場所でゆっくりと読むことができる。
カフェやショップもあり、平日には子ども連れだけでなくノジュール世代の訪問者も多数。ひととき日常から離れ、ファンタジーの世界に没入しよう。
