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伊万里・有田へ

焼きもの巡りの旅

文:垣内 栄 写真:松隈直樹

タレント・荒木由美子さんが訪れる先は故郷に近い、世界に誇る陶磁器の地。
初めてのひとり旅の緊張感も、ちょっと里帰りのようで和みます。
長年義母を介護した経験を人々と共有する活動の狭間、“私”に大切な何かに、また向き合う旅へ。

伊万里
由緒ある鍋島藩の窯元で
青磁作りのろくろ体験
福岡空港から高速バスを伊万里で降り、路線バスに揺られ15分ほどで到着する大川内山(おおかわちやま)。ここにある「鍋島虎仙窯」は代々、鍋島藩窯として青磁の製作と絵描きの用命を承っていた家系だ。由緒ある窯元でのろくろ体験から荒木由美子さんのひとり旅は始まった。

教えてくれるのは、番頭兼絵師・川副隆彦さん。荒木さんは真剣にろくろを回した後、「ちょっと形が崩れたけど、これも芸術よね(笑)」と少し崩れたままで焼いてもらうことに。1ヵ月後、青磁のお皿となって荒木さんのもとに届くそうだ。

ランチは伊万里に戻り、創作料理「櫓庵治」にて。旬の食材が少しずつ6つの器に入った「味覚膳」は女性にぴったり。伊万里牛のしゃぶしゃぶをセットにして、佐賀の滋味を手軽に満喫できる。「若い頃はまったく飲めなかったのに、50歳を過ぎた頃からお酒が飲めるようになったんです」と近年新たな楽しみが増えた荒木さんが、伊万里から松浦鉄道に乗り、散策がてら向かうのは「古伊万里酒造」。創業は明治24年(1891)。四代目の前田くみ子さんは、夫の悟さんとともに、新しい技術を取り入れながら、蔵元として地酒シーンを盛り上げている。人気のブランド酒「古伊万里前(さき)」は、「新しい時代に対応し、前に進む」という意味が込められているという。試飲した荒木さんは「ワインみたいにフルーティで美味しい!」と大感激。「お世話になった方へ贈ります」と早速購入し、配送の手続きもすませる。

ひとり旅の気楽さよ、ほろ酔い加減は電車の移動で覚ませばいい。向かうは今宵の宿がある嬉野(うれしの)温泉。「嬉野といえばお茶も有名。亡くなった父がお茶へのこだわりがすごかったんです。美味しい嬉野茶も楽しみにしてきました」と荒木さん。道すがら、ちょっと欲張って、武雄の名所も散策へ。

武雄 嬉野
迫力の武雄温泉楼門から
美肌の湯・嬉野温泉へ
楼門とは、やぐらを持つ二層造りの門。その佇まいは竜宮城の入口の如し。東京駅を設計した辰野金吾の手になる、国の重要文化財だ。この楼門の中には温泉があり、日帰り入浴もできるそう。武雄温泉駅から嬉野温泉へは、バスに揺られてのんびりと。

宿泊先は「旅館吉田屋」。モダンな和の設えが目をひく、スタイリッシュな温泉旅館だ。「一人旅プラン」もしっかりと整い、おひとりさまも歓迎してくれる。

夕食の料理は佐賀牛や温泉湯豆腐など、地元ならではの美味がたっぷり。そのうえ個室でいただけるので、周囲の目を気にせずに、ひとりの時間をゆったりと過ごせるのは、素晴らしい配慮。とどめは何といっても美肌の湯と言われる、嬉野のお湯の素晴らしさ。とろ〜りとした湯触りで、明日のお肌はすべすべに!「ずっと浸っていたいほど」と荒木さんもご満悦。

有田
窯や陶片が溶け込む町並みと
有田に吹く新しい風に触れる
翌日は嬉野から、いよいよ有田へ。裏通りに多く見られる〞トンバイ塀のある通り〞は、まさに焼きものの町の趣き。陶工たちも参拝した陶山神社にも名品が点在する。

有田焼のショッピングは「賞美堂本店」へ。実は今年、有田焼のフィギュアブランド「momoco」が誕生し、アーティストたちとコラボしたクマ「momocobear」が話題となっている。「すごくかわいくてインパクトがある!」と荒木さん。400年の歴史を持つ有田焼の〝今〞と出会えるのも旅の妙。

ランチは今年4月にオープンした「kasane」へ。築160年の古民家が、リノベーションでおしゃれなレストランへと変身。東京から移住してきた鈴木さん夫妻が営む。地元の名産品を使った家庭料理やスイーツに舌鼓を打って。

(ノジュール2018年11月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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