JTBパブリッシング

50代からの旅と暮らし発見マガジン

定期購読のお申し込みはフリーダイヤルまで 0120-26-4747

人気の特集

酪農王国と絶景の庭を巡る

十勝・帯広

文:石田たまみ 写真:兼村竜介(グレアトーン)、上野公人、十勝千年の森

NHK連続テレビ小説「なつぞら」の舞台、十勝への旅。
日本の食料基地、そして酪農王国ならではの、雄大な放牧風景や豊かなグルメが待っています。
さあ果てしない夏空の下、広い大地のそのなかへーー。

人よりも牛が多い大地
ガーデンも大スケール
北海道は14の行政エリアに分かれ、十勝〈とかち〉はそのひとつ。帯広〈おびひろ〉市を中心とする1市16町2村からなり、管内人口は約34万人、面積は東京都の約5倍に及ぶ。広大な平野で大規模な畑作、酪農、畜産が営まれ、十勝という名称自体がもはや食材のブランドとなっている。日本の食料自給率が40%を割り込むなか、十勝は驚異の1100%台。日本の食料基地として大きな役割を担う。

しかし、そんな豊穣の大地ももとは原生林に覆われた地。開拓は本州からの移民団体によって進められ、その先駆けとなったのが、明治16年(1883)に静岡県から入植した晩成社(ばんせいしゃ)だった。代表の依田勉三〈よだべんぞう〉は「十勝開拓の父」と呼ばれる。

酪農や畜産が発展したのは、畜牛市場が開かれた昭和中期から。今では乳用牛と肉用牛の飼育頭数の合計が44万頭を超える。雄大な放牧風景が旅人を惹きつけるが、折しも今春スタートしたNHK連続テレビ小説「なつぞら」は、十勝が前半の舞台。戦争で両親を失ったヒロインが酪農家に引き取られて成長するというストーリーだから、旅の感興も増すというもの。また、十勝には美しいガーデンが点在し、ノジュール世代の夏旅では見逃せない要素と言える。

ただし、とにかく広大なため、行き先を絞って動かなければ、途中で途方に暮れてしまいかねない。今回は、とかち帯広空港でレンタカーを調達し、帯広を拠点に3町2村を無理なく巡るプランを立てた。

まずは帯広の北西にある清水〈しみず〉町へ。空港から1時間ほどドライブを楽しみ、日高山脈の裾野に広がる「十勝千年の森」を訪れた。ここは未来へ引き継ぐ財産として、北国の庭園文化の創造と発信を進める観光庭園だ。敷地は東京ドーム85個分にも及び、4つのテーマガーデンがある。このうち世界的ガーデンデザイナー、ダン・ピアソン氏が設計した「アース・ガーデン」と「メドウ・ガーデン」が、英国ガーデンデザイナーズ協会主催の「SGDアワード2012」で大賞と国際賞を受賞。「21世紀で最良のガーデン例」などと称賛されたと聞き、ぜひとも見ておきたいと思った。

澄んだ空気を満喫しながら圧倒的なスケールの名園を歩くと、日常の些事を忘れ、心も体も解き放たれる。今回は散策のみにとどめたが、セグウェイに乗ってのガイドツアーもあるそうで、魅力的だ。開放的なカフェやビジターセンター、ヤギのファーム、チーズ工房などもあり、プラン次第では半日たっぷり楽しめるスポットだろう。

昼食でチーズを堪能
夜は屋台ではしご酒
次に清水町の北隣の新得〈しんとく〉町へ向かった。目指すは「共働学舎〈きょうどうがくしゃ〉新得農場」。昭和53年に開設されたこの農場は、心身に悩みを持つ人や、社会で居場所を失った人も共に働き生きる場所。道内でもいち早く本格的なナチュラルチーズ作りを始めたパイオニアで、海外での評価も高い。代表の宮嶋望〈みやじまのぞむ〉さんはこう語る。「熟成に時間のかかるチーズ作りは、競争をしない、ゆっくりとした生き方に合った仕事です。気が巡るように、木造牛舎の床下に炭を埋め、自然の力を生かしておいしいチーズを作っています」。

昼食は農場施設「ミンタル」のカフェスペースで。ラクレットを使った一品と、デザートにフロマージュ・ブランを選び、2種のチーズを堪能した。ちなみに「なつぞら」のロケの一部は新得で行われ、キャストやスタッフの皆さんが、撮影の合間にここを訪れたそう。

新得から帯広中心部に戻ったら、早めに宿にチェックイン。というのも、予約していた「プレミアホテル-CABIN-帯広」は、好立地のビジネスホテルながら、地下に天然モール温泉の大浴場や露天風呂があるのだ。旅装を解き、のんびりと湯あみを楽しんでから、近くにある夜の名所「北の屋台」へ繰り出した。個性的な20店が並ぶなか、十勝産ラム肉を味わえる「飲みくい処琥羊〈こひつじ〉」と、アイヌ料理が評判の「亜細亜食堂ポンチセ」におじゃまして、はしご酒。店主や隣席の人との会話も最高の肴となった。

(ノジュール2019年6月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
ご注文はこちら