老後に備えるあんしんマネー学 第19回

さまざまな情報が飛び交うなか、老後資金に不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。
お金を上手に管理して、老後を安心かつ心豊かに暮らすための、備えのマネー術を紹介します。

バケットリストを
作成してみませんか?

文=畠中雅子 イラスト=平田利之

「バケットリスト」をご存じですか。
バケットリストを日本語に訳すと、「人生のやり残しリスト」や「死ぬまでにやることリスト」のようなイメージになるでしょう。
この先の人生で、必ず達成したいと思うことをリスト化して、ひとつひとつ実現しようとするのがバケットリストを作成する目的になります。
そこで今回は、バケットリストの作り方や作成のポイントをご紹介していきます。

バケットリストには
締め切りを記入する
私がバケットリストを初めて知ったのは、10年くらい前に見たあるドラマでした。そのドラマでは、がんに侵され、余命宣告を受けたヒロインがバケットリストを作って、亡くなるまでにひとつひとつ実現させていく内容が描かれていました。そのドラマを見た後、私自身もバケットリストを作り、ときどき更新をしています。バケットリストには、旅行先の希望もかなり書き込んでいるのですが、すでに国内の行きたい場所は制覇することができました。

具体的なバケットリストづくりに関して、記入方法にひな形のようなものはありません。お気に入りのノートにやりたいこと、あるいはやり残していると感じていることを書き出していくだけでもバケットリストは完成します。手書きにして書き直していくと、あきらめたことなど、過去の自分の気持ちを振り返ることもできます。とはいえ手書きではなく、更新作業が楽なパソコンでの作成ももちろんOKです。

バケットリストを作る際に記入して欲しいのは、「実行時期」と「予算」です。時期については、「2024年12月までに」とか、「2025年の夏休みまでに」のように、実行する時期やいつまでに実行するという締切り時期を設けることをおすすめします。

私のバケットリストにも、その多くに実行時期を書き入れています。時期を入れると「いつか」という夢ではなくて、○年○月頃に実行すべき目標になります。時期を書き込むと計画的に行動できるようになり、その結果、国内の行きたい場所にはすべて足を運ぶことができました。また資格取得のように、達成時期を設定しても合格できなかった場合は、次回の試験日や合格発表日に、締切り時期を延長すればOKです。

目標に対して
予算を書き込むことが大事
バケットリストを作成する際のもう一つのポイントは、予算を書き込むこと。旅行のようにまとまった費用の掛かるものは、予算の見積もりも同時に行わないと、金銭的に難しくなって断念しかねません。そこで、「2023年10月に北海道に行く。予算は10万円から15万円。このお金は、○○銀行の予備資金から出す」というように、どのお金を充てるのかまで書き込んで欲しいのです。

出せる予算の範囲内で目標を立てないと、バケットリストはただの夢リストになりかねません。バケットリストの項目の多くは、日々の支出とは別に発生する支出になるからです。バケットリストの項目は、毎月ではないけれど、1年のどこかで発生しやすい特別支出のようなものと捉えると、予算を書き込む重要性が理解できるはずです。年金暮らしでの特別支出やバケットリストに充てるお金は、予算立てをして貯蓄の中から取り置いておかないと、後期高齢者になったときに「使いすぎた」と後悔する可能性もあるので気を付けましょう。

次は、金額の例を挙げてみます。例えば老後資金として3000万円持っているご家庭があるとします。そのうちの1000万円は、赤字の補塡のために消化されるお金だとします。残る2000万円の中から、万が一の介護費用として夫婦で500万円ずつを取り置くとして、残る資金は1000万円になります。この1000万円の中から、バケットリストのために使える予算の上限額を決めていくのです。仮にバケットリストのために使えるお金を400万円と決めた場合、400万円以内でリストの優先順位を決めていきます。使える資金がもっと多い人は、バケットリストの予算を増やせますし、もちろん、その逆もあります。

はたなか まさこ
ファイナンシャルプランナー。
新聞・雑誌・ウェブなどに多数の連載を持つほか、セミナー講師、講演を行う。
「高齢期のお金を考える会」「働けない子どものお金を考える会」などを主宰。
『ラクに楽しくお金を貯めている私の「貯金簿」』(ぱる出版)など著書多数。

(ノジュール2022年5月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
ご注文はこちら