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霧島錦江湾国立公園への旅

文:山口あゆみ 写真:入江啓祐

九州の南端に広がる霧島錦江湾〈きりしまきんこうわん〉国立公園は、日本で最初に登録された国立公園のひとつ。
23もの火山が連なる、世界にも類を見ないダイナミックな景観が魅力です。
ニニギノミコトが三種の神器を携えて降臨した「天孫降臨の地」の神秘と、驚くほど豊かに湧き出す温泉と滋味深い山里の味。
日本を旅する喜びがぎゅっとつまったエリアなのです。

歩いて感じる
火山のエネルギー
飛行機で鹿児島空港に近づくと、1000mを超える山々が連なる霧島の姿が視界に入ってくる。その雄大さは神々しいほど。しかし、この山々の連なりも約34万年前に大噴火によってできた巨大な加久藤〈かくとう〉カルデラの南の縁に過ぎない。そして霧島の先には桜島、開聞岳〈かいもんだけ〉などの火山がさらに並ぶ。まさに人智の及ばないスケールの大きさだ。30㎞×20㎞という狭い地域に23の火山と火口湖がひしめき合うように存在し、有史以前から続く火山活動はいまも活発だ。

そんな火山のエネルギーを歩いて感じるべく、まずはえびの高原に向かう。霧島の麓にある鹿児島空港から緑が美しい快適な道を車で約50分。標高1200mのえびの高原は峰々に囲まれ、空気が清々しい。韓国岳〈からくにだけ〉がそびえ、傍らの硫黄山〈いおうやま〉からは噴煙がしきりに上がっている。実に雄大な景色だ。えびの高原には韓国岳などの山頂への登山道のほかに、気軽に歩くことができる自然探勝路がめぐらされ、「美しい日本の歩きたくなる道」にも選ばれている。

ここで霧島ジオパークガイドの上水正喜〈うえみずまさき〉さんと合流。「火山によってできた美しい湖がふたつ同時に見渡せる絶景コースを歩きましょう」と提案された。ジオパークとは科学的に貴重で美しい地質遺産をもつ自然公園のこと。アカマツの森に延びる整備された散策路をのんびり歩いてゆく。火山の高地を歩くということで緊張して臨んだが、老若男女が楽しめる、快適な道だ。「アカマツはパイオニア植物といって、裸地から最初に生える植物です。ですから、アカマツが多いこの辺りは比較的最近火砕流によって焼き払われた地域だということです。美しい花を咲かせるミヤマキリシマも同様です。5月下旬から6月初旬、この辺りは実に美しいですよ」

足元にはさまざまな苔が神秘的な姿を見せている。緩やかな登り道を30分ほど歩くと、視界が開け、まるでふたつの瞳のような蒼い湖が眼下に。水の透明さが遠くからもよくわかる。「この湖は火口湖です。こうした湖や滝が霧島にはたくさんありますよ。

(ノジュール2019年5月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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