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天上の木道を行く1泊2日 可憐な湿生植物に会いに

尾瀬[福島・新潟・群馬県]

文・写真=村田正博

日本最大といわれる広大な高層湿原が広がる尾瀬ヶ原。燧ヶ岳の姿を水面に映しだす尾瀬沼。
雪解けを待って咲きだすミズバショウの後を追うように、さまざまな湿生植物が花を咲かせる尾瀬を1泊2日で歩きました。

鳩待峠から山道を下り
尾瀬ヶ原が始まる山ノ鼻へ
上越新幹線と路線バスを乗り継いで到着した尾瀬戸倉〈おぜとくら〉。ここからさらに乗合タクシーで向かった鳩待〈はとまち〉峠が、尾瀬散策のスタート地点。群馬県側の鳩待峠と大清水〈おおしみず〉、福島県側の沼山〈ぬまやま〉峠が尾瀬の入口として多く利用されているが、今回の旅は、鳩待峠から入って大清水に抜ける。尾瀬ヶ原の大湿原と尾瀬沼の湖水を堪能できるいわば尾瀬のゴールデンコースだ。

鳩待峠で身支度を整え、尾瀬ヶ原の西端にあたる山ノ鼻〈やまのはな〉を目指して歩きだす。鳩待峠の標高は約1590m、山ノ鼻の標高は約1410m。約180mの標高差を一気に下っていくのだ。登山道は石段や階段状に組まれた木道が整備されており快適だ。「反対に上り返す時は大変だろうなぁ」と思いながらどんどん快調に下っていく。途中にいくつものベンチが設置されているのは、息を切らして上って来る人のためだろう。

登山道の左手を流れていた川上川〈かわかみがわ〉の瀬音が近づき、平坦地に出るとクマ除けの鐘が現れる。その先の小さな湿原には、ミズバショウの群生がある。クマはこのミズバショウの実を食べるために出没するという。クマに出合わないことを祈って、鐘を大きく鳴らした。

樹林の中を飛び交うシジュウカラやヤマガラなどの小鳥の声を聞きながら、川上川に架かる橋を渡れば、すぐに山ノ鼻に到着だ。ベンチが並ぶ休憩所は、尾瀬ヶ原の木道歩きに出発する人、歩き終えた人たちで賑わっていた。鳩待峠から歩き始めて約1時間。名物の花豆のソフトクリームを味わいながらベンチで小休憩することにした。

(ノジュール2023年6月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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